ホリスティック・タロット|ベネベル・ウィン著

この本は【中級者向】です。
初心者向けの内容も含まれていますが「そろそろタロットの本を手放して、自分なりのリーディングをしたい」と考えている段階で、購入を検討されると良いでしょう。

「ホリスティック」は「全体的な・相対的な」という意味があるようにタロット占いを包括的に網羅した一冊となっています。

「だ・である」のいわゆる体言止めで書かれていること、翻訳だからか言い回しに難しさを感じたり、文意が取りにくいところがあること、著者がポール・フォスター・ケイスや易の思想を著書に反映しているので「とっつきにくさ・わかりにくさ」を感じるセクションがあるのは事実ですが、多数のスプレッドを取り扱っている・プロ占い師を目指すにあたって知っておくと良いことなど、あまり読むことの出来ないコンテンツもあるのが見どころと言えるでしょう。

上下巻併せて1000ページ近くになる大著であり、タロット占いを知らない人に向けてのエクササイズから長年タロットに携わっている人向けのものまで混在しているので、ブックガイド的な意味も込めて私なりに初心者向、中級者向、上級者向、参考(※注)というように各項目に付与したので参考にして頂ければと思います。

※注)ここでいう『参考』は余力があったら読むと良い、という内容のものを指しています。

文中「プラクショナー」「シーカー」という言葉が出てきますが、タロットを読む人のことを「プラクショナー」、タロットに助言を求める人のことを「シーカー」と呼ぶ、ということを頭の隅に入れておくと良いでしょう。

著:べネベル・ウェン, 翻訳:伊泉 龍一, 翻訳:水柿 由香
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目次

第1巻

第1章 タロット解析 [中級者向]

章立てされていますが、どちらかといえば著者による、この本の紹介と言った雰囲気があります。
文中、キリスト教に関する言及があり、キリスト教の影響を強く感じない・宗教に興味が無い人にはピンと来ない部分があるかも。
冒頭に紹介した「 プラクショナー」「シーカー」 の言及もありますが、あとから読み返しても良いかな、と思えるセクションです。

第2章 歴史を学ぶ [ 中級者向 ]

タロットカードはどのようにして成立したかを解説しています。
興味が湧いたタイミングで読むと良いでしょう。
個人的には鏡さんの『タロットの秘密』を併読することをお薦めします。

第3章 恐れを静め、理論を考察する  [ 中級者向 ]

タロットは恐ろしいものではないか、という不安に対し著者なりに解説をしているセクション。

キリスト教を思想背景にしたときのタロット占いに対する忌避感の話が出てきますが、これは著者がキリスト教圏で生きている人である、という背景を踏まえて読むと良いでしょう。

※尚「恐れを静め」は「恐れを鎮め」が正しいと思いますが、表記通りにしています。

第4章 デッキを選択する [ 初心者向 ]

タロット占いをするにあたって、どんなタロットカード(タロットデッキ)を選べば良いかに対し著者なりに回答しています。

第5章 ライダー=ウェイト=スミス・タロットの分析  [ 中級者向 ]

ウェイト版タロットがどのような構成になっているかを解説しています。
著者の東洋思想が垣間見えるセクションではありますが、コートカードの分類や、四大元素に対する考え方は参考になるでしょう。

第6章 パーソナル・ジャーナル [ 初心者向 ]

タロット初心者の人は、この項目から読むと良いでしょう。
タロット占いをするにあたってジャーナル=記録をどのようにつければ良いかを丁寧に解説しています。

ただしP43『リーディング・セッションのメモ』に「シーカー(占いを依頼する人)」の名前や連絡先など個人情報に関することを残すよう推奨している点においては慎重に検討をする必要があるでしょう。
占いを受ける人によっては、個人情報を占い師が保持することを嫌う人もいるからです。

第7章 初心者の反復練習 [ 初心者向 ]

第7章は第6章からの続きとして捉えるのが良いでしょう。
と言いますのも

これからタロットの学習を始めるために、タロットデッキを手元に用意してから、本書の第8章の「キーワード」と第9章の「カードの意味のための事典」に進んでいってほしい。この段階ではどのようにカードをシャッフルし、どうやって「ケルティック・クロス」を読めばいいのか、どんなキャンドルを使うべきなのかなどといったことについては、まったく気にする必要はない。まずは一般的なカードの意味に慣れ親しみ、カードの絵とのつながりを作っていくことからタロットの学びのプロセスは始まる。

『ホリスティック・タロット』P44

の文意が取りにくいからです。
このセクションでは「カードに親しみましょう」と書かれているだけで「どのようにして」が明示されていないので自分で探すしかありませんが、第6章にある「パーソナル・ジャーナル」がヒントとなると思います。

第8章 キーワード [ 中級者向 ]

大小アルカナのキーワードが書かれています。
著者なりの使い方がP49に明記されていますので、参考にしながら使うことをお薦めします。

第9章 カードの意味のための事典 [ 中級者向 ]

大アルカナは3ページ、小アルカナは2ページを使って解説しています。
ただし、全くの初心者ではなく、何冊かの本を手にしながら占いの練習を繰り返し、学んでいる人が「更に知識を広げる参考」として使うことをお薦めします。

と言いますのも冒頭に書きましたように、著者の考えがポールフォスターケイスをベースにしていること、そして東洋(特に易)の思想が随所にあるからです。

小アルカナには「数の意味」「カードが3枚出たとき」「カードが4枚出たとき」が書かれています。考え方のひとつとして参考にすると良いでしょう。

第10章 シグニファイアー・カード [ 中級者向 ]

他のタロット解説書では『シグニフィケイター』と解説されている、いわゆる象徴札をどのように決めるかの解説です。
丁寧に解説されていますので象徴札をどう選べば良いか悩む人には参考となるでしょう。

第11章 ファースト・オペレーション [ 上級者向 ]

ポール・フォスター・ケイスの「ケースメソッド」をベースに著者が修正したスプレッドの紹介です。
4枚展開ではありますが、ポール・フォスター・ケイスの思想が下敷きになっていますので上級者向ではありますが、2巻目で紹介されている幾つかはファースト・オペレーションを下敷きにしていますので、学んで見ても良いでしょう。

第12章 コート・カードを解釈する [ 中級者向 ]

このセクションは非常にお薦めです。
私も『コートカードを人物以外として読むにはどのようにすれば良いですか』という文章を執筆していますが(※注)、更に詳しく丁寧に書いてあります。
中でもP296の『スプレッドの中の複数枚のコート・カードを比喩的に解釈する場合』の表は学ぶところがあります。

※注:tarotnavini掲載している文章は2021年に執筆したものですが、元は2018年に執筆したものを改変しています。

第13章 シャッフルし、カットし、カードを引く [ 初心者向 ]

タロットカードをどのようにシャッフル・カットし、引くのかについて解説しています。

第14章 スプレッドをリーディングするための基本 [ 中級者向 ]

1枚引きからケルト十字、生命の樹、日本ではあまり見かけないスプレッドまで多様なスプレッドが実例とともに掲載されています。
スプレッドの実例集として、リーディング実例として活用出来るでしょう。

第2巻

第15章 スプレッドを熟考する [ 中級者向 ]

展開結果をどのようにリーディングしてゆくかの具体的なアドバイスが書かれています。
「大アルカナの意味」や「コート・カードの意味」など第1巻で言及されているものもありますが「カードの逆位置」など学べるところもあります。

途中からポール・フォスター・ケイスや易が混じりますが、難しいと思うところは飛ばしても良いでしょう。

第16章 タロット・スプレッドを考案する [ 上級者向 ]

スプレッドをどのようにしてつくるのか、基礎理論的なことが紹介されています。

第17章 タロット・リーディング・ステップ・バイ・ステップの分析プロセス [ 上級者向 ]

第11章で取り扱ったファースト・オペレーションを下敷きにしながら、プラクショナーとシーカーの間でどのようなやりとりをするかについて解説されています。
ファースト・オペレーション以外でも応用が効くとは思います。

第18章 状況を作り出す5つの要素 [上級者向]

このセクションでは「不可抗力・カルマ・気質・学んできたこと・行動」という5つの要素を提示し、それぞれの要素にどのタロットが該当し、どのようにリーディングしてゆくかが示されています。

第19章 リーディングがネガティブな場合、シーカーの心を落ち着かせる [参考]

このセクションでは架空の「ネガティブな」占い結果を、どのようにシーカーに伝えるか、について書かれています。
「どんな内容で占ったか」が書かれていないので、リーディング実例として取り扱いにくいので「参考」としました。

第20章 自分自身のためのタロット・リーディング [参考]

タロットでセルフリーディング出来るでしょうか。
出来るとすればどのようなことに気をつけ、実際のリーディングをする上でどのようなことが読めるかが解説されています。
セルフリーディングに興味のある人は一読すると良いかもしれません。

第21章 タロット・リーディングの場の設定とエネルギーを補うもの [参考]

このセクションはお香やクリスタルなどに関する情報が掲載されています。
情報としては「良くまとまって」いますので、興味のある人は参考にすると良いでしょう。ですが「必須ではない」ことは念頭に入れておく必要があるでしょう。

尚『祈りの言葉に関する注意』『意識的なリーディングvs無意識を使ったリーディング』は上級者もしくは、上級者を意識しはじめた中級者であれば注釈を参考にしながら読み、検討する価値がある、と言って良いでしょう。

第22章 中級者のための熟考と演習 [中級者向]

このセクションは非常にお薦めです。
中級者向と分類しましたが、タロット占いの初心者さんもエクササイズとして取り組むことをお薦めします。
P107【おすすめのエクササイズ:熟考】および、P108【おすすめのエクササイズ:演習】も、参考にしてみると良いでしょう。

第23章 タロット実践にとっての瞑想の価値 [上級者向]

瞑想について記載されていますが、書かれている技法は若干わかりにくいように感じましたので、上級者向に分類しました。
手前味噌ではありますが『浄化・瞑想・儀式を行い、タロットに集中しましょう』もご参考になられてください。

第24章 不適切な質問 [中級者向]

このセクションは「不適切(と著者が想定する)な質問」が来たときの著者なりの回答が示されています。
回答を、このまま使うのは難しい場合でも想定問答として「自分ならどうこたえるか」を考える訓練として使うと良いでしょう。

第25章 倫理的配慮 [中級者向]

著者が「もっとも重要」と位置付けるこのセクションは第24章とセットで読むと良いでしょう。
占い師の心構えと言っても良いことが書かれていますので、丁寧に読むことをお薦めします。

第26章 タロットと恋愛 [初心者向]

恋愛占いに置いて、タロットをどのように捉えると良いかが書かれています。
それぞれのカードが恋愛で出たらどう読むかのキーワード集になっていますので、参考にしてみてください。

第27章 タロットと職業 [初心者向]

仕事占いに置いて、タロットをどのように捉えると良いかが書かれています。
それぞれのカードが恋愛で出たらどう読むかのキーワード集になっていますので、参考にしてみてください。

第28章 立ち直るためにタロットを使う [上級者向]

このセクションでは立ち直る為に必要な要素を「楽観・自信・ユーモア・表現力・集中力・つながり・信念」の7つの項目にタロットを当てはめ、どのようにリーディングに織り込むか、具体的実例を紹介しながら解説しています。


第29章 深層診断 [上級者向]

このセクションでは、2つのタロットを使用することが推奨されており、ファースト・オペレーションを使用することもあり、対面鑑定でじっくりとシーカーとセッションが出来るスキルを持っていることが求められます。
可能なら、何度か実践に近い練習を重ねることをお薦めします。

第30章 オープニング・オブ・ザ・キー [上級者向]

『黄金の夜明け団』で使われていた「オープニング・オブ・ザ・キー」を実占例を交えながら紹介しています。
尚、P229以降に『フィフス・オペレーションのための別の方法』として易を交えた技法が紹介されていますが、易を知らない人はは飛ばしても差し支えないでしょう。

第31章 マルセイユ・タロットとトート・タロット [参考]

このセクションは、ウェイト版タロットと、マルセイユ・タロット、トート・タロットの違いについて言及しています。リーディングの技法については言及がありません。

第32章 職業としてのタロット実践 [中級者向]

このセクションでは、金銭を得て占いを行うにあたって、どのようなことが必要かについて言及しています。
『準拠法』 『事業の形態』 はアメリカで占いを行うにあたっての諸注意なので、日本で占いを行う場合とは事例が異なります。

『ビジネス・モデル』『マーケティング戦略』については、ご自身の占いスタイル(どこでどのように占い師として活動するか)に応じて参考にすると良いでしょう。

第33章 わたしについて:タロットとの出会い [初心者向]

第2巻の、そしてこの本の締めくくりを飾るのは、著者のタロットとの出会い、そして苦いエピソードに端を発するコラムです。
著者のタロットに対する真摯な、そして真面目な態度を伺い知ることが出来るでしょう。

付録

付録は、各セクションで取り上げられたことの幾つかを補足する形で付与されています。必要に応じて読むと良いでしょう。

著:べネベル・ウェン, 翻訳:伊泉 龍一, 翻訳:水柿 由香
¥8,580 (2021/12/26 23:27時点 | Amazon調べ)



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