『憶えないタロット』は、『愚者』が『魔術師』から『世界』までの21枚の登場人物に出会い、感想を述べていく、いわゆる「Fool’s Journey」の形式で大アルカナを解説する本です。

柔らかいタッチのイラストが使われており、全体として親しみやすい雰囲気があります。タロットに苦手意識がある人でも、物語を追うような感覚で読み進めやすい一冊だと思います。
一方で、図像の解説やカードの意味については、著者独自の視点を交えながらも、他のタロット解説書にも見られる基本的な内容が中心です。

気になるのは、「この本を使えば本当に“憶えなくてもいい”のか」という点でしょう。
個人的には、視点は面白いものの、やはり覚えることはあると感じました。著者は丸暗記を否定していますが、タロットを身につけるうえで大切なのは、本を読むこと以上に、実際にどれだけ占うかだと思います。その意味では、どの本にも限界があります。
また、左ページの物語的な解説は本書ならではの魅力がありますが、右ページのカード解説については、他のタロット入門書と大きく変わらない印象もありました。
本書には「分厚い本はいらない」というキャッチコピーがあります。ただ、大アルカナ編と小アルカナ編に分かれており、合計すると2,750円です。その価格であれば、タロット占いの入門書を一冊購入する選択肢もあるでしょう。
そのため、個人的には「最初の一冊」というより、すでに基本的な入門書を持っている人が、別の視点から大アルカナを読み直すための副読本に近い本だと感じました。
タロットの世界観を物語として味わいたい人や、カードの意味を丸暗記ではなくイメージで捉えたい人には、手に取る価値のある一冊だと思います。